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何もかも様変わりしたけど...受け継いでほしい日本の文化・習慣

【企画室】 Vol.11

2017年03月08日

社会・生活

企画室
大林 裕子

 1970年代の終わり、OLとして社会に出た。当時、事業計画書や議事録など重要な書類もほとんどが手書きで作られていた。先輩社員が清書した書類には、まるでペン習字のような見事な文字が並んでいた。

 一方、新人OLは短い書類を完成させるまで、書いては直し、書いては直し、書いては直し...の繰り返し。シャープペンの芯によって、右手の小指は黒光りしていた。やがて右手は丸くなったまま固まってしまい、その痛みを今も忘れない。

 やがて、ワープロが職場に配備され、それもパソコンに取って代わられた。複写機はいつしか複合機(MFP)になり、カラーコピーも当たり前になる。日進月歩どころか、秒進分歩の技術革新により、職場も急速に変貌を遂げていった。この国は「ジャパン・アズ・ナンバーワーン」と持てはやされ、バブル時代は社会全体が高揚感に満ちていた。何もかもが様変わりした時代を、何とか生き抜いてきた自分を「何だかスゴイね!」 とほめてあげたくなる。

 でも、日本の文化や習慣には変わってほしくないものが少なくない。ところが、当の日本人がそれを忘れてしまい、海外の人のほうがその良さを感じ取っていることもある。例えば、アフリカ大陸で環境保護運動を展開した、ケニアのノーベル平和賞受賞者ワンガリ・マータイさん。日本で「もったいない」を知り、「自然や物に対する敬意や愛の意思が込められた言葉」として感銘を受けたそうだ。海外の人に日本の良さを知ってもらえると、嬉しく誇らしい気持ちになる。その一方で、肝心の日本で忘れられつつあることは、恥ずかしいし残念でならない。

 「お年寄りや体の不自由な方に席をお譲りください」と繰り返される電車内のアナウンスも、日本らしい習慣の一つだろう。しかし、昔は今ほど頻繁に聞いた記憶がない。言われなくても、席を譲る人が多かったからか。

 つい先日も70代ぐらいのおばあさんが、さらに年上とみられるおばあさんに席を譲っている姿を目撃した。隣にはスマホを見つめる若い女性が座っていたが、譲る気配は全くない。そんな光景を周りの乗客も気にすることなく、やり過ごしていた。ほんのちょっと相手の気持ちを考え、相手の立場に立つだけで、みんなが優しくなれると思う。 こんな話をしても、「ウザイ」で片付けられるだけか...

 若い世代には日本の文化や習慣の良さをたくさん知ってもらい、自分の子供たちに受け継がせてほしい。どんなに科学や技術が発展しても、この国を円滑に動かすソフトパワーは昔からの「思いやる心」や「礼儀正しい所作」、「奥ゆかしい姿勢」などに宿るはずだ。いつまでも変わらず、キラリと光り続ける日本・日本人であってほしい。



20170228ohbayashi1_600.jpg雷門(東京都台東区) ※一部修正

(写真)筆者

大林 裕子

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